凪は上白糖になりたい。

薄給教員。鬱病患者。日々のこころの記録をします。Twitter→@naginatto710

無意識男尊女卑。

2,3年前のことであろうか。

 

母方の祖父の一回忌だった。

喪服を着て親戚が一堂に会した。

墓前でひととおりいろいろなあれこれ()を終えたあと、

故人の妻、つまり母方の祖母の奢りで

みんなでお昼ご飯を食べに行った。

 

私は超級に酒が弱い。

しかし呑むこと自体は好きだ。

量が飲めないだけで。

 

たまたま私の周囲に座った親戚の方々がみんな生ビールを頼んだ。

「凪ちゃんも飲みなよ、遠慮しないで」

そんな風に言われて、私も飲んでみようかという気になった。

 

そして私はやはりすぐに酔っ払った。

 

けれど、どうしてもその一杯だけは飲みきりたかった。

一杯まではだいたいいけることが多いのだ。

それにそれは祖母の奢りなのだ。無駄にしたくなかった。

 

私は飲んだ。がんばって飲んだ。

でも、3分の2くらいまで飲んだところでさすがにもう無理だと思って、

残りを父に飲んでもらった。

祖母には申し訳ない。

 

母が運転席に座る車に乗り込みながら、

ああ、まずいな、相当に酔ってるな、なんて考えていた。

残すのが申し訳ない、そんな気持ちが先行して、

自分の酔っ払い具合を少し無視して飲みすぎてしまった。

 

そして私は、高速道路を走る車内で、ぐーすか寝た。

 

そして、唐突に起きた。

尿意を催した。

「トイレ」と一言発すると、

「ちょうどすぐにサービスエリアがあるわよ」と母が答えた。

 

タイミングが良い。

すぐに車はSA入り口に入った。

 

ところが私は、急速に気持ちが悪くなってきた。

眠りから覚めて気持ち悪さを認識してしまったのか。

あ、これ、吐いてしまう。

そう直感した。

 

車がSA入り口に入ってからSAに到着するまでの間の時間すら待てず、私は自分の喪服の上に吐いてしまった。

 

私が吐いたことに気づいた父が大騒ぎしていた。

車を汚されたくなかったのだ。

 

父は昔からそうだった。

幼少時、車酔いした私が窓から外に吐いてしまったとき。

母は私の背中をさすってくれた。

しかし父が母のそれを止めた。

「やめて!車が汚れるから!」

 

幸い私は優秀な防衛本能で、喪服は汚しても車は汚さないようにしていた。

そのあとSAのトイレでしばらく休み、

体調が落ち着いてから車に戻って、

迷惑と心配をかけたことをみなに謝罪した。

 

その後の車内で父に怒られた。

「ああいう場ではあなたは自重しなさい。〇〇ちゃんも△△ちゃんも(2人とも私の従姉妹♀)飲んでなかっただろう。お母さんも◻︎◻︎さん(母方の伯母)も飲んでないだろう」

 

私に反論はできなかった。だって車内で吐いてしまったのだから。

 

けれど違和感を覚えた。

たしかに2人の女性の従姉妹は飲んでいなかった。

しかし1人、男性の従兄弟は飲んでいた。

母は飲まなかったが、父は飲んだ。

伯母は飲まなかったが、伯母の旦那さんは飲んだ。

 

つまり、「女は飲むな」ということなのだ。

男は飲みながら、仕事の話をする。社会の話をする。

女は飲まずに、男同士の宴会が円滑にまわるように、サポートをするのだ。

女は男と一緒に仕事の話に混ざることは許されないのだ。

そして運転は当然女性なのだ。母であり、伯母なのだ。

 

「男女平等」。こんな文言がいろいろなところで謳われるようになって久しいが、

コミュニケーションの場においては未だに男尊女卑が当たり前。

正月なんかも、準備は全部女性、そんな中男性だけ先に飲み始めてる。

 

いや、もしかしたらうちの家系が男尊女卑激しいだけかもしれないけれど。

 

どうしてこんなことを思い出したかというと。

 

先日、父方の祖父が亡くなった。

それで今日、告別式があった。

 

従兄弟(♂)は飲んだ。

飲んで、親戚のおじさんと仕事の話を弾ませていた。

私は飲まなかった。

母も、伯父の奥さんも飲まなかった。

 

私も仕事の話に入りたかった。

これはただ単純に私の話術が足りないだけなのだが、

なかなか私は話に入ることができず、

隣に座った高校生の妹と小さな声で話していた。

 

帰り道、母の運転する車内で私は思った。

やはり少しだけ飲んでおけば、もうちょっと饒舌になれたのではないか、と。

アルコールはコミュニケーションツールだ。素面よりは話しやすくなる、お酒を飲んだことのある人ならその感覚はわかってもらえるだろう。

 

それで、思ったことをそのまま言ってみた。

「やっぱり私、ちょっとでもいいから飲まないと、なかなか話せないなー」

すると父が一言。「は?」

 

そこで私は思い出した。

父は「男尊女卑主義者」だったと。

 

女のくせに飲めばよかったとは何事だ。

女は話なんかできなくたっていいんだ。

父の中にはそういう価値観が、大前提としてあるのだと。

 

やっかいなのは、父の中には

「自分が男尊女卑をしている」という自覚が

おそらくないだろうということだ。

本当にタチが悪い。

 

父には息子がいない。

いるのは私と妹だけだ。

子供は娘2人しかいないのに、女性しかいないのに

大事な大事な2人の子供が、2人とも無意識下で蔑まれて

それでいいんですね?いいんですね。

 

 

 

ふざけんな。